Episode Guide

Prologue

近世ヨーロッパに似た、どこかの異世界。

かつて東の果て、ウジュホロドと呼ばれる地に住んでいたアルソウム族は長い干ばつに苦しんでいた。同胞を救うため新天地を探して旅立った六人のアルソウム族の若者は、長い旅の果てに豊かな森林と水に恵まれた土地を見つけてウジュホロドに戻り、アルソウム族の半分を連れてこの地に移住した。

伝説の「六祖西征」である。

それから一〇〇〇年の時が流れた。

六人の若者の名を戴いた六つの領邦「アルソウムの六冠の地」は人口二〇〇〇万人を誇る大国・アルソウム連合王国となり、平和と繁栄を謳歌していた。だが、その平和と繁栄の陰には戦場で斃れる無名の兵士たちの姿もあった。

帝国歴一五五〇年、八月。

将来を嘱望されたチェレク連隊第八歩兵中隊長イェビ=ジェミは、親友でもあった部下スピルキの戦死をきっかけに連隊を離れて、あてどのない旅に出る。その両の腰には、不思議な紋様が浮かび上がった灰色の刀身を持つ、出所不明の二本の剣があった。

剣士イェビ=ジェミと不思議な二本の剣の旅路は、いつしかアルソウム連合王国の隠された過去を浮かび上がらせ、連合王国の歴史そのものを変えてゆく。

Episodes


道しるべの歌 Waymark Songs ―アルソウムの双剣I―

 アルソウム連合王国陸軍チェレク連隊の第八中隊長イェビ=ジェミは、戦死した親友スピルキの遺族に最後の給料を届けるため、連隊を離れて西への旅に出た。旅の途中、紙漉きの里で黒い肌の傭兵グリアットにかけられた強盗殺人の冤罪容疑を晴らしたイェビ=ジェミは、紙問屋の組合から逃げた真犯人ラツモを捕縛して欲しいという依頼を受ける。ラツモを追って山の中に分け入ったイェビ=ジェミは、「山の兄弟」を名乗る山賊たちの頭領の娘ブレイと出会い、二人は協力して連合王国の西の果てに聳える聖地アレバ山を目指すことになる。

ナナカマドの娘 Rowan’s Daughter -アルソウムの双剣II-

 アレバ山への旅を経て結ばれたブレイとイェビ=ジェミは、首都ゼルワの下町で暮らし始めた。腕利きの傭兵としてたちまち引っ張りだこになっていく夫のイェビ=ジェミを見て、ブレイは焦りをおぼえる。しかし二人が下宿する居酒屋「銀陽亭」に集まる常連客たちはそんなブレイを暖かく見守り、いつしかブレイは大都会の中に自分の居場所を見つけていく。一方、アルソウム王宮では「パルセノイ女神の娘」ブレイの存在が密かに注目を集めており、やがて二人は宮廷政治に巻き込まれて……

湖賊 Bandits on the Lake ーアルソウムの双剣IIIー

 傭兵イェビ=ジェミとその妻ブレイに里子として引き取られたファイスは14歳になり、正式にイェビ=ジェミに弟子入りして傭兵親方への道を歩きだした。その頃、連合王国の南に広がる巨大な湖では湖賊と呼ばれる盗賊団が出没し、連合王国とエマオ王国・バツェ王国との通商に甚大な被害を与えていた。この湖賊への対策を話し合う国際会議にアルソウム連合王国の武官代表として出席することになったイェビ=ジェミ。その従者として南に向かったファイスは、港町ウアラプエで謎の少女に出会う。それは、後に湖賊紛争と呼ばれる戦いの始まりだった。

兵站の王 Commissary General ーアルソウムの双剣IVー

 帝国暦1550年1月。アルソウム連合王国の海外領土であるラファル島に駐留するチェレク連隊に出動命令が下った。行き先は北大陸の同盟国、グディニャ君主国の港湾都市イグリムである。だが大陸国家であるアルソウム連合王国に、海を越えて軍隊を派遣する方法を知る者は居ない。連合王国王国の歴史上、唯一人それを成し遂げたのは第八代マハラビエ侯爵シムロン・エルティルダ卿。チェレク連隊主計参謀シムロン・グウィルの遠い先祖だけであった。後にその卓越した手腕で「兵站の王」と称えられた若者の冒険が始まる。

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